
「アメリカ男子大学潜入レポート」第5弾。
前回に引き続きアメリカの男子大学、Wabash College(ワバッシュ・カレッジ)に残る「伝統」を取り上げます。
ヒゲ&モヒカン男が大量発生する話。新入生の試練の話。女装クイーンの話。
前回は、一風変わったシュールな話が盛りだくさんでした。今回は、当事者からしたらより「まとも」、なのかもしれない話をいくつかご紹介します。
伝統の番人たち ~Sphinx Club~

Wabash Collegeにはいくつものクラブがあります。学生組織・クラブの一覧を見てみると、見慣れた名前が並んでいます。料理クラブ、スペイン語クラブ、、など何をするか一目瞭然ですね。Sphinx Club(スフィンクス・クラブ)。何をするのかさっぱりわかりません。古代エジプト研究の同好会でしょうか。違います。では、何か。
Wabash CollegeのSphinx Clubとは、簡単に言えば伝統を守る学生連合のようなものです。Sphinx Clubは、伝統的、そして慈善的なイベントを通して、大学の連帯、統一、精神を全学生に対して浸透させます。クラブのオフィシャルウェブサイトを見てみると、このように書かれていました。

このSphinx Club。あらゆるイベントに登場します。アメリカンフットボールの試合の際は、Sphinx Clubが応援団となります。
前回の記事で紹介したChapel Sing(チャペル・シング)もSphinx Clubがリードします。また毎週卒業生や教授を招いて、Wabashについて語る講演会のようなものを開催しています。

Sphinx Clubのメンバーは簡単に見分けがつきます。いつも、白地に赤線のビーニー帽(Potsとも呼ばれています)をかぶっているからです。イベントの際は、紅白のストリップ模様の変なオーバーオールを着ています。日本でいうところの、学ランに学帽といったところでしょうか。一見、ダサいようにも思えます。が、これも男子校に残る伝統です。Sphinx Clubのメンバーは一般に、憧れの存在らしいです。
メンバーになるのための入会儀礼は長く厳しく、大変。また成績優秀者である必要があります。それ故に、「選ばれし者たち」であると見なされます。
校則はたった一つ ~Gentleman’s Rule~

Wabash Collegeにも校則があります。しかし、長くて覚えられないようなものではありません。たった一つの、簡潔な文章。それをWabash Collegeの男子学生たちは遵守する必要があります。
“The student is expected to conduct himself at all times, both on and off campus, as a gentleman and a responsible citizen.”
「学生は、キャンパス内外で常に、紳士として、そして責任ある市民として行動しなければならない」
これがWabash College唯一の規則、Gentleman’s Rule(ジェントルマンズ・ルール / 紳士規定)です。より完結に言えば、「Be Gentleman(紳士たれ)」。クラーク博士が札幌農学校で導入した校則と原理は同じです。 学生を信じ、自主性を尊重し、自由を与える。ルールの解釈の幅の大きさが、学生の自治や、自主的な紳士的行動につながっています。

覚えにくい長々とした校則は、一度学校を卒業してしまえば一瞬で忘れてしまいます。ほとんど役にも立ちません。一方簡潔かつ真理をついているルールは、その後の人生でも一人一人の中で生き続けるはずです。
塗装され続けるベンチ ~Senior Bench~

キャンパスの中央棟の前にある石製ベンチ。Senior Bench(シニア・ベンチ / 4年生のベンチ)と呼ばれています。4年生のみ、座ることを許されます。100年以上続く伝統です。このベンチ、年がら年中塗られては塗り替えられ、塗られては塗り替えられを繰り返しています。大学のあらゆる団体によるベンチの塗装も伝統となっているのです。
時には、特定のフラタニティやクラブが彼らのシンボルマークやカラーでベンチを塗装。時には、ベンチが白く塗られ、その上に赤字で何らかの主張やメッセージが書かれていることもあります。カラフルに塗り替えられてゆくベンチは見ていて楽しいです。
根性の科目登録 ~交換留学生は命拾い~

コンピューターの時代、あらゆるものは電子化されていますね。大学でも、様々な手続きがオンラインで済むようになってきています。科目登録などその最たる例ではないでしょうか。そんな中、時代に取り残された大学が存在します。
そうです。伝統が大好きなWabash Collegeです。この大学では、科目登録がオンラインではないのです。わざわざ紙の申請表に取りたいコースを書いて、提出する必要があります。そしてこれは早い者勝ちです。何が起こるか。登録するオフィスに向けての長蛇の列です。前日の夕方から、この列はできはじめ、夜には建物の外へあふれています。

秋学期の科目登録はまだ良いです。8月なのであったかいです。問題は春学期です。時期は1月。インディアナの冬は毎日マイナス10度を下回っています。この気温で、野外で一晩中過ごすのは自殺行為です。それでも伝統LOVE。ニヤニヤしながら並ぶ学生が多いのも事実です。

私はその時風邪をひいていました。絶望しました。登録日の前日、ダメ元で科目登録を行うオフィスへ向いました。すると、1年しかいない交換留学生だから特別に、ということで、先に希望するコースを取らせてもらえました。言ってみるものです。キャンパス唯一の交換留学生は、いろいろとお得なことも多かったです。
伝統を大切に

男子大学の学生は伝統を愛する傾向が人一倍強いように思えます。変な、あるいは辛い伝統でも、それを周囲の仲間と共に経験、そして共有することに至上の喜びを感じているようでした。Wabash Collegeは「流行ではなく伝統に重きを置く大学」であるという
理事たちの言葉を、学生たちが証明してくれました。
参考リンク
・
Picture a Men's College Circa '56; That's Wabash
・
The Sphinx Club is just misunderstood
・
Sphinx Club of Wabash College
・
Trust an 18-year-old?
・
Wabash College Class Agents Letter
・
Registering for Classes
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